2019年4月21日 (日)

<解答ネット流出事件>♯12. M社による削除

 E-メール送信の数時間後、M社事務局から返信が来ました。著作者人格権の侵害品であることを認め、削除をしてくれるようです。

<返信要旨>
 当社では知的財産権を侵害する商品の出品を禁止しています。

 出品情報の削除を希望される場合、プロバイダ責任制限法に準じ、削除対応を行っております。
A社の法人登記簿謄本 PDF版をお送りください。

 当社は、出品者には「知的財産権侵害による削除」である旨通知します。出品者からの削除の理由の詳細等の問い合わせがあった場合に備えて、出品者から直接問い合わせることができるA社のE-メールアドレスをお知らせください。                以上

 すぐにA社に確認して、登記簿PDFと問い合わせ窓口をM社に送信しました。
 しばらく本解答集の出品ページを見ていると、
    突然 

SOLD  OUT !


 と 大きな文字が出てきました。

「ええええ? 削除される前に売れちゃったの? どうしよう」と
オロオロしていたら、そのページが全部消えてしまいました。

 その後、前回と同様の検索ワードで検索しても、Zさんの出品物で検索しても、一切表示されないようになっていました。
「SOLD  OUT」というのは、削除するためのコマンドだったのでしょうね。
その後、M社から「削除しました。ご確認ください。」のE-メールが届き、本件は無事終了。

<おまけ>
 A社は、以後、解答集を希望する教員には、「貸与」と表紙にデカデカと書いて、さらに、貸与品であること、授業が終了したら返却をお願いする旨の手紙を添えてお送りするようにしています。
 借りているものを、所有者に無断で売ってしまうのは、横領等の犯罪になりますものね。

 

| | コメント (0)

2019年4月20日 (土)

<解答ネット流出事件>♯11. 公表権の侵害なら

 著作権法は第18条で「著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。」と定めています。この権利は「公表権」と呼ばれ著作者人格権の一つです。

 公表権とは、自己の未公表著作物につき、公表するか否か、どのような形で、あるいは、いつ、いかなる時期に公表するかということを決定できる権利のことをいいます。

 例えば、未完成の論文で書き直そうと思っていたものが雑誌に掲載されてしまった場合、個人的な日記が街角に展示されてしまった場合、連載推理小説の謎解きの部分を出版社が本文より先に掲載してしまった場合など、プライバシー権など他の権利の侵害とは別に公表権の侵害にもなり、別途損害賠償(慰謝料)の対象となります。

 そこで私は、X先生とA社の代理人として、M社に対しE-メールで警告書を送り即時削除を求めました。M社の出品規定の「禁止されている出品物」「知的財産権を侵害するもの」に該当するとの点は、次のように書きました。

<警告書>

 この出品物(本解答集)は,教科書(本書)と同一の著作者X氏が作成した著作物であり,X氏から「本書を使用する教員に限りコピーを渡してよい」との了解を得て,A社が特定の教員にコピーを贈呈しているものです。A社はX氏から,本書については出版権の設定を受けておりますが,解答集の方の公開は禁止され,秘密として扱うことが義務づけられております。本解答集には,本書の応用問題の解答が書かれており,これらが公表されて学生が入手できるようになると,授業の運営,成績評価等が困難な事態が生じます。さらに「解答等が公表されている教科書」ということで,大学教科書としての意味をなさなくなり,次年度不採用となるおそれもでてきます。このように,本件商品に解答等が含まれている以上,著作者が公表を望まないことは当然のことであり,誰の目にも明らかです。

 著作権法第18条は公表するかしないかを決定する権利を認めています。この権利は「公表権」と呼ばれ著作者人格権という知的財産権のひとつです。本解答書の出品は著作者が公表しないと決めたものを著作者に無断で公表するものですから,著作者の知的財産権を侵害するものです。                         以上

 

| | コメント (0)

2019年4月19日 (金)

<解答ネット流出事件>♯10. 行き詰まり・・・そのときASKAのニュースが

 さあ困った、あれだけ数打っても当たらない、休むに似たりか、いよいよ諦めかけていたところに、テレビのニュースが流れてきました。

 「歌手のASKAさんが、未発表曲を芸能リポーターY1さんに提供したところ、無断でテレビ局Y2の番組「◎◎◎◎」で流されたのは、著作権および著作者人格権である公表権の侵害にあたるとして損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、東京地裁でありました。〇〇裁判長は『公表は許可していなかった』と認め、Y1さんとY2局に約117万円の支払いを命じました。」

 え? あ!! これ使えないかな。公表したくないものを勝手に公表されたら、著作者人格権の侵害になるようです。さっそく調べてみましょう。

 この判例については裁判所の公式ホームページで見ることができます。

 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/232/088232_hanrei.pdf

 

| | コメント (0)

2019年4月18日 (木)

<解答ネット流出事件>♯9-2. 違反品のボツネタ特集~後編~

その2 秘密文書とは言えないか?

 冊子(動産)の所有権が教員にあるとしても、解答集が公開されては困る、秘密にしなくてはならない。だから、この冊子は秘密文書にあたるといえないか。営業秘密の漏洩は、不正競争防止法で犯罪(刑事罰の対象)とされているから、同法の定める定義に当たれば、犯罪行為により不正に入手された品といえるが、やはり無理そう。

 同法第2条6項の定める「営業上の秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」。本書の解答は、同法の定める生産方法、販売方法に関する情報という典型例には該当しないし、そもそも一番違う点は、秘密として管理されてはいないこと。冊子に通し番号をつけて配布先を特定する、冊子に「マル秘」「部外秘」と書く、渡す際にコピー禁止、秘密扱いを徹底するなどの方策は、全然とっていないし。

その3 「転売禁止」は通用しないか?

 本解答集は、教授用資料だから、第三者への譲渡は有償,無償を問わず本来禁止されている。表紙に「教授用資料」と書いてあるのだから、転売禁止・譲渡禁止であることは明らかだし、大学の教員は全員承知しているはずだ。転売禁止は、贈与契約についている付款だから、違反すれば(即犯罪ではないが、少なくとも)契約違反、債務不履行にはなる。契約違反でも、「不正な経路で入手した商品」とは言いえないか。

 M社をはじめ、いろいろなフリマの運営会社の掲示板や利用規約Q&A を調べていくと、「転売禁止」商品でも違反品と扱われる場合があるようだ。しかし、それも、本体に明示されている場合だけ。本解答書には、「教授用資料」とは書いてあるが、大学の先生が解答集を譲渡・転売するなんて予想していないから「転売禁止」なんて失礼なことは書いてない。やはり「黙示の転売禁止」を理由に違反品にもっていくのは無理そう。
 

(4)犯罪や違法行為に使用されるおそれは?

 本解答書をフリマで買った人は何に使うのか?

 教科書なら購入者が一般より安く買って個人的に使うことも考えられるが,非売品の解答集を1万円近く払って買うのは、おそらく大量にコピーして販売するためだろう。この点をとらえて、著作権侵害行為⇒違法行為に使用されるおそれありといえないか。

 あるいは、甲大学の例でもわかるように、解答が流出してしまうと他大学において授業の運営や適切な成績評価ができなくなり,授業という業務の妨害になる(刑法233条の偽計業務妨害、入試問題Yahoo!知恵袋カンニング事件参照)⇒違法行為に使用のおそれありといえないか。

 いろいろ考えてみたものの、買う側の気持ち次第で犯罪にも使えるというのでは、違反品とは言いえない。そんなこといったら荷造りヒモだってハサミだって違反品になってしまう。解答集の場合、個人が自分の勉強用だといわれてしまえば、どうしようもない。やはり犯罪目的以外考えられないくらいの明白さが必要だろうし、そういう物は大抵、御禁制品だ。

 

| | コメント (0)

2019年4月17日 (水)

<解答ネット流出事件>♯9-1. 違反品のボツネタ特集~前編~

 無い知恵絞って考えても、やはり良い考えは浮かばず、ボツネタの山を築いただけでした。以下にぐるぐる回転する頭の中(検討過程)を再現してみます。

 (2)著作権の侵害は?

 解答の中身を掲載しているわけではないから、複製権や公衆送信権の侵害にはならない。画像は載っているけど表紙だけ。商品の表示であるから、デザインとか商標とかの不正利用でもない。やはり古本の販売と一緒だから著作権法その他の知的財産権侵害は無理そう。

 (3)盗難品等、不正入手は?
 本解答集を授業用に受け取った教員が、これをフリマアプリに掲載する行為、あるいは、フリマに出品されることを知りつつ第三者に渡す行為が、窃盗その他の犯罪を構成すれば良いいのだ。

   その1 他人の物とは言えないか?

 本解答集が、教員にとって他人の物といえないだろうか。
例えば、大学の備品とはいえないか。大学の備品を勝手に売ったら窃盗や横領になりそう。教員が大学の研究図書費で購入した書籍は、大学の備品であり、その教員が独占的に使用できるが、勝手に譲渡、処分や廃棄はできない。本解答集も同じではないか。あるいは、教員はA社の物を授業用に限定して借りているとはいえないか。用途が定められて渡された物を勝手に売ったら、横領、背任になりそう。
 しかしこの点は、A社からの「本解答集は、『贈呈』と書いたしおりを挟んでお送りしております。」という説明であえなくボツ。贈呈と言えば、贈与、所有権は完全に教員に移っているから。

 

| | コメント (0)

2019年4月16日 (火)

<解答ネット流出事件>♯8. M社の出品規定を探せ

 それでも、依頼を受けた弁護士としては諦めるわけにはいきません。

 M社の規約を見て、何か規約違反が言いえないかどうか、考えて見みましょう。M社の出品規定のページには、
「禁止されている出品物」として、
(1) 偽ブランド品、正規品と確証のないもの、
(2) 知的財産権を侵害するもの、
(3) 盗難品など不正な経路で入手した商品、
(4) 犯罪や違法行為に使用されるまたはそのおそれのあるもの、
(5) 公序良俗、モラルに反するもの、
 等が挙がっており、この規約に違反して出品された物については、通報に応じてM社の判断で出品ページを削除する旨、記載されていました。

 これのどれかに該当すれば、何とかなるかもと、いろいろ考えました。その考えた結果は、以下のとおりです。

 

| | コメント (0)

2019年4月15日 (月)

<解答ネット流出事件>♯7. 出品者に取り下げてもらうのは?・・・無理

 解答集が出回るとX先生やA社が困るのは確かなのですが、古本として中古市場に出品されたものを、撤回させるのは、簡単ではありません。

 まず出品者が誰だかわかりません。Zというのはニックネームで、本名も連絡先もわかりません。解答集を冊子でお渡しした教員の所属・氏名はA社で把握していますが、一冊一冊に通し番号がついているわけでもなく、出品されたものがどの教員のルートか特定できません。仮に特定できたとしても、教員はまさかフリマで売ったりしないでしょうし、不要になって学生にあげたとかゴミとして捨てたとかで、もらった学生や拾った人が出品したのかもしれません。

 いずれにせよ、出品者と直接コンタクトをとるのは無理ですね。まあ、そういう匿名性が、フリマアプリの一つの魅力でもあるわけです。

 そうなると、やはりサイトの運営者に通報して、削除してもらうしかありません。しかし、今回の事件は、解答データを無断でネットに公開したという第1事件とは異なります。古本という動産を中古市場で販売しただけで、出品者の所有権の正当な行使のような気もします。

 

| | コメント (0)

2019年4月14日 (日)

<解答ネット流出事件>♯6. 第2事件~解答集がフリマで売られている!~

 ブログの件が解決してからしばらくして、また、A社から電話&E-メール、「辻先生、今度は解答集がフリマに出ています! 何とかしてください!!」と。A社から聞いたフリマアプリ(M社の運営するフリマ)を起ち上げて、<テキストタイトル&「解答」>で検索すると、本解答集の出品ページがすぐに表示されました。検索ワード<出版社名&「解答」>でも出てきます。

そのページには
  本解答集表紙の画像(写真)📖
 とともに、
   【解答集】「◎◎法総合事例演習」A社
       テキストの教授用別冊解答集、非売品です。
  価   格:9,999円
  出 品 者:Z(ニックネーム)
  カテゴリー:本、参考書
  商品の状態:未使用に近い
等の商品の説明がありました。

 さあ大変、また甲大学のときと同じような被害が出そうです。フリマでこの冊子を購入した人は、1万円近く払うのですから、有料でコピーして配ったり、ネットに画像を公開したりして、金儲けに使うでしょう。A社の販売も落ち込むかもしれません。

 でも困りました。これって、古本を売っているのと同じですよね。単純な動産売買。どうやったら止めることができるのでしょう。

「フリマ」・・・フリーマーケットの略で、中古品や不用品を持ち寄って売買や交換をする市のこと。フリーマーケットのフリーは"free(自由)"ではなく"flea(名詞では蚤[ノミ])"のこと。ノミの市。
※※「フリマアプリ」・・・フリーマーケットのようにユーザー間で売買・商取引が行えるスマートフォン向けサービス、およびモバイルアプリの総称。

 

| | コメント (0)

2019年4月13日 (土)

<解答ネット流出事件>♯5. 違反通報&警告書

 私は、当初、警告書を内容証明郵便で送るといういつもの方法をとるつもりでおりました。しかし、加害者Yの住所も氏名もわからない、プロバイダのC社からYの住所と氏名を教えてもらうしかないけど、個人情報ですから、その手続は極めて面倒、それならC社宛に送ればよいのでは・・・とあれこれ調べていると、C社のブログ本部にあたるページに、違反通報の窓口があることがわかりました。この通報制度は、どのブログでも設けているものです。

 例えば、このブログ(ココログ)でいえば、このページ ↓ です。
https://support.nifty.com/form/0/iff/
「このフォームは、@niftyのサービス(ホームページ、ブログサービスなど)を利用して当該サービスの利用者により発信された情報により、ご自身の権利が侵害されたと考えている方が当社に情報削除の申し立てを行うための窓口です。」と書いてあります。

 そこで、この通報制度を利用してネット上で通報し、同時にC社宛に内容証明と著作権侵害の資料を郵送して通報しました。その後、C社から連絡があり、C社の定める手続に従って必要書類を提出し、結果的に削除をしてもらうことができました。

 最初の相談がきてから削除まで、3日くらいかかりました。

 

| | コメント (0)

2019年4月12日 (金)

<解答ネット流出事件>♯4. 削除請求の法的根拠・・・公衆送信権の侵害

 さて、ブログの記事の削除請求の根拠は? と、著作権法をみて、すぐに「X先生の著作権の侵害」をみつけました。紙にコピーして配れば複製権(著作権法21条。まさしくこれがcopyright)の侵害になるのと同じように、ブログに掲載して公開すれば公衆送信権の侵害になります。

 第2条(定義)
七の二 公衆送信 公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。
 第23条(公衆送信権等)
 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
   2著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

 公衆送信権の侵害なら、原告X先生、被告Yの訴訟で削除が認められるでしょう。これでいきましょう

 

| | コメント (0)

«<解答ネット流出事件>♯3. 第1事件 ~解答データが公開されている!~